母親のラーメンの味を再現し、東京・町田市で宝蘭ラーメンをつくり続ける宇都宮さん。3月には『ラーメンチャンピオン選手権(TV東京)』にも出場するなど、近年注目のラーメン店である。『ラーメン首都圏ランキング(TOKYO 6/8号)』では、157店中第6位に輝いた。
「ラーメン屋をしよう」と思ったのは、2度目の離婚後、3人の子供を養うためにトラックの運転手をしていた頃のこと。ルート配送の傍ら、あちこちで食べ歩いたラーメンの味に触発され、母親の果たせなかった“ラーメン店をやり続けること”を実現したかったからだという。
27歳まで北海道で暮らした宇都宮さんには、「人に使われるのではなく、この東京で自分の力で店を持ちたい」という強い決意があった。
1人で切り盛りするおかみさん
町田の駅から少し離れた立地に、カウンターのみ11席の小さな店にも関わらず、開店前から店頭にはお客さまが並ぶ。「すみません、1人なもんで、丼はカウンターに上げてもらえませんか」。1人で店を切り盛りするおかみさんは、カウンター内から出ることなく麺上げを続ける。
厨房の奥には、3つの大きな鍋に“こってり”と“あっさり”の2種類のスープが沸いている。
「塩の中盛り、コーン入りでお願いします」
「こってりの大盛りをください」
おかみさんの真撃な姿勢に、この店には行儀のいいお客さまが多い。9年目にして、お客さまから「あ、またうまくなったね」と言われるのは、おかみさんが店を始めた後も、ラーメンを食べ歩いて自分の味を進化させ続けているから。「節子のラーメンはおいしいよ」。母の言葉も大きな励みとなっている。
マスコミで取り上げられるほど、「しんどいな」と思うことも増えるが、おかみさんは自分のスタイルを崩さない。お客さまからいただく「おいしかったよ」、「ごちそうさま、また来るね」の声がガソリンになっている。
涙もろくて情に厚いおふくろの味
腕っ節のたくましさとは裏腹に、涙もろくて情に厚い宇都宮さん。台ふきで汗も拭けば涙も拭う。2度の結婚、離婚、長男の死、と試練は続く。しかし
「私の人生、反省することはあっても後悔は1つもない」
と言い切る。
北海道の昆布、かつお節、鶏ガラ、ゲンコツ、タマネギ、長葱、ニンニク、ショウガ、林檎……スープにはたくさんの旨みが煮込まれている。そこに、おかみさんの生き様が隠し味となって、人柄のにじみ出た雷文ラーメンが完成するのである。
住所:東京都町田市本町田943
TEL:042-722-5567
営業時間:平日11:30~15:00、土・日・祝11:30~15:30
定休日:月曜日 祭日は営業
雷文
宇都宮 節子さん
スナック、焼肉店の経営を経て、27歳で単身上京。服飾デザイン、声優、貿易会社、トラックの運転手などを経験し、ラーメンにたどり着く。「おかみさん」の味に集まる常連客が多い。