ラーメン職人の熱いストーリー ラーメン 東へ西へ

ラーメン東へ西へ No.14 鈴木商店

平成11年11月11日11時11分、その日が『麺の日』と知ってか知らずか、福岡市内に1軒の博多そば屋がひっそりと開店した。店主、鈴木憲一さんは根っからのラーメン好きで、自分でも食べ歩きやつくり方の研究を重ねること、かれこれ14~15年。居酒屋家業の傍ら「いつかは、ラーメン屋を」と温めておいた想いに、ついに灯りがともった。

「いま僕は52歳なんだけど、あと10年間はラーメン屋でがんばろうと思って店を始めたんです」

と店主・鈴木憲一さん。開店したばかりの真新しい店内は混みもせず、行列が出来るでもなく2組、3組と、ほどよいペースでお客さまが訪れる。鈴木さんと馴染みの友人知人や、近くの会社に勤める方、それにご近所のおじいちゃん、おばあちゃんなどが『博多そば』目当てにやってくる。

屋号の『鈴木商店』は、ご主人のおじいさんが宮崎で商売をしていたときの店名で、ロゴもそのまま譲り受けたのだという。

「僕が商売をやれるのは、祖父の血を引いているんでしょう。こうやって店ができるのもご先祖さまのおかげ。感謝しなくちゃね」

豚骨の本場であえて醤油ラーメンを

『博多=とんこつラーメン』、その図式が知れ渡って、博多ではすっかりとんこつラーメンが主流になっている。しかし、福岡の人たちに「こういうラーメンもあるんだよ」と知ってほしくて、鈴木さんは自分のつくりたいラーメンを出すようにした。

鈴木商店の『博多そば』は、醤油ベースのあっさり澄んだスープが特徴。白濁しないとんこつスープに鶏ガラスープを合わせた動物性スープと、煮干しアゴだし、貝柱などからとる海鮮スープをブレンドする。ひと口すすっただけで、スープの旨味が口の中に高品質な吸い物のように広がる。

も独自に製麺し、コシのある細いうどんを思わせるような麺を開発した。加水率が通常のとんこつ向きのより高い。1晩、2晩寝かせることでのどごしのいいコシの強い熟成する。

「原料もつくり方も、“これで満足”ということはおそらくないでしょう。日々、調合を変え自分の味をさぐっているところです」

とご主人。だから、今のところはまだ爆発的ヒットよりも、ひっそりと「博多そばって何?」くらいの感覚でお客さまが入ってくれればいいと思っている。

ラーメンの街、福岡・博多。いろんな表現のラーメンが登場する。懐かしくて新しい、鈴木商店博多そばは、いずれラーメンフリークが探し求めて食べに来るラーメンになるであろう。



鈴木商店
赤坂店
住所:福岡市中央区赤坂1-1-17
TEL:092-734-1155
営業時間:11:30~14:00、17:00~26:00
(日曜・祝日)11:30~15:00、17:00~20:00
定休日:年中無休

鈴木商店

鈴木 憲一さん

鈴木商店
店主
鈴木 憲一さん

昭和23年、宮崎市に生れる。実家は米穀商を営んでいた。やがて福岡に移り、サラリーマン生活を経て33歳のとき、居酒屋『木楽屋』を始める。この度、博多そば屋を始めるにあたって居酒屋は若い衆に任せ、日夜らーめんづくりに精を出す。