ラーメン職人の熱いストーリー ラーメン 東へ西へ

ラーメン東へ西へ No.36 バカうまラーメン 花の季

東京駅から新幹線で約1時間、餃子の町・宇都宮へラーメンの作り手を訪ねた。『バカうまラーメン 花の季』、菊池英之さん。昨年11月に福岡で食べた菊池さんのあのラーメン(「五行」で開催されたラーメンイベントにて)が、また食べられる!その期待から、昼ごはん&夕飯を抜いて取材決行。そして……。

夜の宇都宮駅。バスだと、そこからさらに30~40分くらい行ったところに『花の季』はある。タクシーなら5000円近くかかるそうな。本当に『田んぼの真ん中』の広い敷地(なんと500坪!)内に『花の季』を発見。知らずと顔がほころぶのがわかる。

聞きしに勝る広々とした店内。高い天井に太い梁が渡され、漆喰壁と白木の板が壁面を取り囲む。中央には12人がゆったり相席できる大テーブル……そう、九州で言うなら湯布院か阿蘇のドライブウェイにあってもよさそうな造りのラーメン屋なのだ。

一昨年の暮れ、現在地に移転オープンするに当たって、店主・菊池英之さんはオーナーの磯さんと綿密な打ち合わせを繰り返し、日本家屋専門の大工さんの助けも借りて、この店を納得いくまでつくり込んだそう。ラーメンサイドメニューに見られる細部まで妥協のないこだわりは、ランプシェードやバリの椅子など備品類にも十二分に感じられた。

「ラーメン屋になったのはね、まず自分が『食べたいな』から始まって、『どうして栃木県には美味しいラーメン屋さんがないの?』と思い、『じゃあ、自分でつくろう』という流れ」

麺あげする時の菊池さんの厳しい表情とは裏腹に、瞳にはくったくのない笑み。聞けば、店を始める前に日本列島ラーメン食べ歩きを決行し、例えば九州なら自家用車で2週間もかけて、自分の足で「ホンモノ」を味わい、目と舌とビデオカメラに、その特徴を記憶させたのだ。

たくさんの研究の末、宇都宮らしからぬラーメン(今日の花の季では、和風ダシの効いた醤油とんこつスープ平打ち中太麺トッピングトロトロチャーシューシナチクネギナルト海苔)が完成。もほぼ8割は自家製で提供まかなえるようになったという。

宇都宮を新しいラーメン名産地に

取材時も翌日のマンゴープリンの仕込みをしながらの受け答え。1個1個、実を器用にくり抜いて、刻んでシロップを加え、なんとも手間のかかること……そう言えば、先ほどのチェンピンだって、餃子の街・宇都宮で餃子以上のご馳走である(と思う)。

「おいしい物を見つけたら、人に教えたいと思うでしょ? 食べさせたくなるでしょ? 人の喜ぶ顔が好きなんだよね」

と菊池さん。訪れるお客さまは0歳児から80代まで幅広く、移転してから特に女性客とカップルが増えたらしい。閉店間際にも、カップルと親子連れを見かけたし、最後のお客さまがスープを飲み干し、デザートのココナツアイスを待っていた。「肩肘はらない心地いいおもてなし」に、ついつい長居をしたくなるお店なのだ。

いつだって全力投球の菊池さんに、今後目指すものを訊ねてみた。すると

「河原さんや千葉さん等の『ラーメン・バカチン・クラブ』や、大ちゃん等の『郡山 一麺会』に触発されて、自分たちも14軒のラーメン屋が結集し『宇都宮ラーメン会』を発足させました。地元を良くしていこうという同業者の集まり、その必要意義を感じたんです。もっとおいしいラーメンが出せるよう、宇都宮のラーメン屋さんたちと頑張っていきます」

とのこと。すでに8月最初の土日には、『宇都宮ラーメン会』が一丸となって地元の食材を使った創作ラーメンを屋台販売したのだとか。餃子の街・宇都宮が『ラーメンの街』として全国に名を轟かす日は来るのか……大いに期待したい。



バカうまラーメン 花の季
住所:栃木県宇都宮市新里町1606‐13
TEL:028-665-5517
定休日:月曜日
営業時間:11:00~15:00、17:00~20:30
※土日祝は11:00~14:00、17:00~20:00

菊池 英之さん

バカうまラーメン 花の季
店主
菊池 英之さん
KIKUCHI HIDEYUKI

1955年4月、栃木県に生まれる。青山学院大学法学部卒業。在学時に『東池袋 大勝軒』のラーメンに衝撃を受ける。大手ステーキレストランに約10年勤務し、「ラーメン屋になる」志しをもって退職。平成3年12月、晴れて『花の季』 をオープンする。13年12月、店を現在地に移転~今日に至る。