ラーメン職人の熱いストーリー ラーメン 東へ西へ

ラーメン東へ西へ No.60 ラーメン 凪 生田智志さん

豚骨ラーメンチェーン店『一蘭』に就職。ラーメン創作に魅入られた男は「日本一の豚骨ラーメンをつくりたい」と独立を決意した。2004年9月、東京・新宿「ゴールデン街」にあった「日替わり店主バー」から『ラーメン凪』の歴史は始まる。「打倒!河原成美一風堂」が旗印だ。ごまかしのない1杯を追求する生田さんのラーメン人生にスポットをあてる。

25歳、『一蘭』関東エリア店舗の開発担当として、東京にいた。仕事一筋のさなか休暇でニューヨークへ。そこで見た活気ある街並み、異国文化を目の前に、 自分の無力さを痛感する。歩むべき道は「独立」だ。忙しい業務の合間をぬって、向学のため年間100軒以上のラーメンを食べ歩く。肌寒さが残る春先の夜、アゴ出汁を生かした塩ラーメンを食すために『らー麺 本丸亭』(神奈川県厚木市)へと出向いた。

「店の扉を開けた瞬間から、これまでにない衝撃を受けました。ラーメン、店づくり、接客、どれもが五感をビリビリと刺激する。ラーメン1杯にはこんなに人 を感動させる力があるんだ、と痛感したんです。ラーメン店をやりたい、というだけの生半可な気持ちでは店はすぐに潰れてしまうと教えてくれた1杯でした」

風のないところに風を起こしたい! IT駆使の広報戦略

27歳、会社を辞めた。しかし…

「金も人脈も、自分のラーメンの味さえもない。まさに無風の"凪"状態だったんです」

風のないところに風を起こしたい!この一念を胸に、早朝から夜中まで働きづめの日々を送る。店名は凪に、開業までの猶予は500日、日本一の豚骨ラーメンをつくろう・・・開業の構想を着実に固めていく。

会社を辞めた04年の秋、店を持つチャンスが訪れた。新宿・ゴールデン街の『ブレンバスタ』は店主が日替わりで立つことで有名な小さなカウンターバー。縁あって、この場所で『火曜日限定ラーメンバー凪』をスタートした。

「当初のお客さんは友人のみ。カウンター越しに生の声を聞いて、味を改良していきました。インターネットHPやブログを活用した細かな情報発信と意見交換も武器になったんです。個店ができる精一杯の広報戦略として(笑い)」

友達が友達を、口コミが口コミを呼ぶ。豚骨ラーメンだけでなく、創作ラーメンも提供するようになり、気がつけば半年後には繁盛店に。週2回の営業ながら、1日に80杯近く売る店へと成長した。

ラーメントライアウト優勝! ゴールデン街を卒業し渋谷へ

06年、2つの転機が訪れる。慣れ親しんだ「ゴールデン街」から卒業、渋谷で本店を構えることが決まった。昼は豚骨ラーメン専門店『ラーメン凪』、夜は60種類のカップ酒と酒のつまみ、「日替わり創作ラーメン」を提供する『麺酒場 夕凪』へと変貌する店だ。

渋谷への移転計画が具体化していた春先、新たなステップアップのチャンスが到来する。 東京・立川にあるラーメンテーマパーク「ラーメンスクエア」が主催した「ラーメントライアウト」秋部門で見事優勝したのだ。優勝の副賞はこの場所での新規出店。生田智志の名前は業界で一躍有名になった。6月に渋谷本店、10月に立川店をオープンする。

「365日日替わり麺」が話題。3店舗目を再びゴールデン街に

職人として頂点を極めるために、自分のソウルフードである"豚骨"にこだわる。本店のランチタイムは「凪とんこつ」「メガ豚骨」「ギガ豚骨」というタイプの違った3種の豚骨ラーメンを用意。パンチが効いたその味にしっかりとファンがついている。


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にもかかわらず、なぜ夜は「日替わり創作ラーメン」を提供するのか?

「決まった味を提供するだけならば普通のラーメン店。その日しか食べられない味もあって良いと思うし、ぼくたちにとって店は技術向上につながる、最高の修 行の場です。創作ヒントを与えてくれるのはお客様と対話。だからウチの店ではラーメンのうんちくをどんどん語ってほしい」

金のひつじラーメン、ジャンク醤油、鯛塩ラーメン、カレー風味ライト鶏白湯ラーメン…お客の声を生かした「365日替わり麺」のストックレシピは、すでに500近くにのぼる。


365日替わり麺
(クリックで拡大します)

業容も拡大している。渋谷本店、立川店に続き、10月下旬には原点の地「新宿ゴールデン街」に新店舗を構えるという。

夢は世界制覇―まずは「打倒!河原成美、一風堂だ!」

「麺を通じて夢を語り続けることができる会社を目指す」が『ラーメン凪』の企業理念だ。生田さんが見せてくれた3枚の画用紙には、その未来予想図が綿密に描かれている。


未来予想図
未来予想図 未来予想図1 未来予想図2 未来予想図3
(クリックで拡大します)

「新しい麺文化を創造し世界に挑戦する。そのためには日本を含め、世界の料理や麺文化を吸収し技術を高めていく必要がある。ただ、ぼくたちはまだまだ"ひよっこ"。まずは豚骨ラーメンで日本一を目指します。将来の夢ですか?もちろん、打倒、河原成美一風堂です!」


(取材・撮影・執筆・編集/力の源通信編集部)


ラーメン 凪
住所:東京都渋谷区東1-3-1カミニート1階
TEL:03‐3499‐0390
定休日:なし
営業時間:
ラーメン専門店『ラーメン凪
11:30~16:00
麺酒場『夕凪』
18:00~翌3:00
日曜は~22:30
店舗HP:
http://www.n-nagi.com/

ラーメン凪

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『ラーメン 凪』
店主
生田智志
(いくた・さとし)

1977年7月30日、福岡県北九州市生まれ。学生時代はテニスに明け暮れる。刑事ドラマ「トミーとマツ」に憧れ警察官を目指し専門学校へ。夢破れ、株式 会社一蘭に就職。27歳まで5店舗のエリアマネージャーを歴任、関東営業担当に。2004年8月、独立し飲食業界へ。新宿・ゴールデン街で『火曜日限定 ラーメンバー凪』を運営するかたわら、ラーメン店、製麺所、『西麻布 五行』などでアルバイトを経験。06年6月に本店となる「ラーメン凪」を渋谷で開業、同年10月には立川店をオープンした