ラーメン職人の熱いストーリー ラーメン 東へ西へ

ラーメン東へ西へ No.62 二代目 海老そば けいすけ 竹田敬介さん

甘エビやイタリアントマトなど、斬新な素材を使い新感覚のラーメンを生み出す男がいる。竹田敬介さんは、2005年に『黒味噌らーめん 初代 けいすけ』を開店して以来、業界に風穴をあけ続けるイノベーターだ。常に世間の注目を集める独創的な一杯を生み出す彼は、いま何を見つめているのか。

(キャナルシティ博多店にて取材)


海老そばで全国に名を馳せる

2007年6月22日、都内屈指のラーメン激戦区・高田馬場で絶大な支持を得る人気店が、満を持して福岡に上陸した。『二代目 海老そば けいすけ』を手掛けるのは、フレンチ、和食の料理人として輝かしい経歴を持つ新進気鋭のラーメン職人・竹田敬介さんだ。彼の代表作「海老そば」は、トンコツラーメンの聖地・福岡でも一大センセーションを巻き起こしている。

甘エビの頭からダシを取り、白醤油で味を整えたこの一杯は、エビの上品な香りが個性を発揮する。その香りを十二分に楽しんでもらいたいと、器にもこだわった。

「最初はワイングラスのような形状を考えていました」

せり上がっている丼の奥が"香り返し"となり、食べようと近づけた鼻を刺激する。機能性と、インパクトを兼ね備えたこの丼は演出効果も抜群だ。食材から器まで、ラーメンの既成概念を打ち破ったスタイルが話題となり、今では全国のラーメンテーマパークから声が掛かる存在になった。

二代目 海老そば けいすけ

憧れのフレンチの世界へ

16歳、料理の世界に踏み込んだ。幼少の頃から自然と料理に親しんでいた少年は、いつからか自分の店を持ちたいと思うようになっていた。最初に修行の場に選んだのは和食店だ。この道で独立しよう、そう心に誓った。

1年後、たまたまテレビでフレンチの巨匠・三國清三さんの番組を観た。見事な立ち振る舞いと、華やかな料理に魅せられ、一瞬で虜になった。迷うことなくフランス料理店の門を叩く。

憧れだったフレンチの世界には、楽しさとやりがいが満ち溢れていた。

「先輩たちの負担を少しでも減らそうと、誰よりも早く厨房に入り、タマネギを全て剥いて準備しておきました。すると、『直前に剥かないと風味が無くなるだろ!』と叱られてしまったんです(笑い)」

抑えきれないほどのやる気と向上心。時には空回りすることもあったが、失敗さえも糧とし、めきめきと頭角を現す。その後、数軒のフレンチでシェフ、総料理長を経験。独立開業する実力は十分についた。

フレンチから居酒屋業界への転身

しかし、人生の分岐点に立った竹田さんが選んだのは居酒屋だった。

「フレンチ業界を見渡すと、超一流と呼ばれる一握りの勝ち組とそれ以外の負け組に二極化していました。フレンチの道に進んでも、頭打ちになる可能性が高い。料理のジャンルに囚われない居酒屋なら、フレンチで培った力を試せると思ったんです」

27歳、東京都内で飲食店をチェーン展開する『株式会社 ラムラ』に就職。ホールスタッフから料理人に。やがて商品開発や企画を手掛ける部署に配属され、リーダーに上り詰めた。5年あまりで、店舗経営の知識や商品開発のノウハウを修得する。

「商品開発部の仕事を通して、本当にやりたいことが明確になりました。料理というフィールドで、誰も見たことがない、全く新しいものを生み出すことです」

ついに機は熟した。

ラーメンは新たな創作の場

2004年、和食・炭火焼『美味川柳 炭香』(びみせんりゅう たんか)を東京・日本橋に開店。炭をコンセプトに、和と洋のエッセンスを盛り込んだ創作串料理で勝負した。オープン2カ月で確かな手応えを掴み、1年が経った頃には、繁盛店へと成長。

しかし、それだけでは満足しなかった。新たな表現の場を模索していた時に閃いたのがラーメンだった。幅広いアプローチが可能な自由度の高さに魅かれ、絶対に誰も思いつかないような自分だけの一杯を開発したいと思い立つ。

市場を分析し、醤油や豚骨に比べてライバルが少ない味噌を選ぶ。味は、北海道の『彩未』をヒントに考案。健康に配慮し、味噌に竹炭を加える。黒色のスープには白い生クリームで彩りを添え、見た目の芸術性も重視するフレンチの技法を取り入れた。

36歳、東京・本郷に『黒味噌らーめん 初代 けいすけ』を開店する。メニューは「黒味噌らーめん」一本に絞り込んだ。見た目の華やかさを兼ね備えた新しいラーメンは、口コミで話題になる。全国ネットのテレビ放映など、メディアの力が追い風となり、たちまち多くの客で賑わうようになった。

ラーメンを知れば知るほど、創作意欲が高まった。

フレンチ時代に得意としていたワタリガニのコンソメスープ。魚介のうま味がギュッと詰まったあの味を、ラーメンで表現できないだろうか。ワタリガニよりも馴染みがあり、しっかりとしたダシがとれるという理由から、エビを選んだ。

こうして出来上がったのが、「海老そば」だ。「黒味噌らーめん」と全く違う商品を提供するため、二代目と称し、屋号も変えた。2006年7月、『二代目 海老そば けいすけ』が誕生する。


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表現の場として世界を視野に

2006年10月、東京・立川の『ラーメンスクエア』に『三代目 けいすけ 紅香油』を開店した。豚骨の良さを残しつつ、さらにスープを引き立たせる食材はないか。度重なる試作の末に完成したのが、豚骨ラーメンをベースにイタリア ントマトの酸味を効かせた前代未聞の「紅香油ラーメン」だ。ともに提供されるガーリックトーストをスープに浸しながら味わうなど、食べ方の常識までも覆し た。

三代目は契約期間が終了したため、路面店オープンを検討している。しかし、頭の中は、すでに四代目の構想でいっぱいだ。もちろん、今までにない一杯を追求する姿勢は変わらない。

「並大抵の努力ではクリアできない目標を設定し、がむしゃらに突き進むのが自分流。2015年までに七代目までのラーメンを開発し、海外へ打って出ます。世界の人々をアッと驚かせてみせますよ」

(取材・撮影・執筆・編集/力の源通信編集部)


住所:東京都新宿区高田馬場2-14-3三桂ビル1F
TEL:03-3207-9997
定休日:無休
営業時間:
11:00~23:30
日曜・祝日は~23:00
系列店
『二代目 海老そば けいすけ』
高田馬場本店ほか、キャナルシティ博多店(福岡)
『黒味噌らーめん 初代 けいすけ』
本郷本店ほか、アクアシティお台場店、品達店
(全て東京都)

二代目 海老そば けいすけ

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二代目
海老そば けいすけ

店主
竹田敬介
(たけだ・けいすけ)

1969年6月1日、広島県江田島市生まれ。有限会社グランキュイジーヌの代表取締役。小学生になると、誰に教わったわけでもなくチャーハンを作っていた という料理好き。フレンチで12年、和食で5年の修行経験を武器に、2005年、ラーメン業界へ。現在は、7年後の海外進出を視野に入れ、週2回のペースで英会話教室に通う。趣味はゴルフ。毎月、『せたが屋』の前島司さんや『ラーメン 凪』の生田智志さんなど、気心が知れた仲間たちとスコアを競い合っている。実力は「ご想像にお任せします」とのこと。