ラーメン職人の熱いストーリー ラーメン 東へ西へ

ラーメン東へ西へ No.16 魁龍

北九州にパンチのきいた久留米ラーメンの店がある。しかも、そこの店主が一風堂・河原に熱い想いを寄せている(?)と聞いた河原は、「いっぺん食いに行ってみよう」と小倉へ向かった。そこには、声の大きな気のいい男が誠実にラーメンをつくっていた。

今回の取材はKBC『ドォーモ』、FBS『ナイト・シャッフル』等のキャスター、山本華世ちゃん(と河原は呼んでいる)の縁結びで実現した。

河原「森山クンは、どうして小倉で久留米ラーメンば出しよっとね?」

森山「もともと久留米で育ったんですよ。こっちに来たのは、15歳の時です。亡くなったオヤジは俺が生れる前、オフクロと2人で池町川沿い(久留米)でラーメン屋台を引きよったそうです。文化街(久留米)に店を出したこともあったけど、結局うまくいかんで店閉めて……。子供の頃は花畑(久留米)の『とん吉』や『南京千両』によく行ってましたヨ。あの頃の久留米ラーメンの味が忘れられんのですよ。店を始めるときは、オヤジが応援してくれました」

父が息子に遺した“味”という遺産

魁龍』がオープンしたのは平成4年の4月6日。

父、定男さんはラーメンの味を完成させきれずに苛立っていた息子に自分のつくり方を伝授すると、役目を果たしたかのように閉店から3ヵ月後に息を引きとった。森山さんは「この味はオヤジが残してくれた唯一の財産」と懐古する。

河原「よか話やねぇ。それはそうと、このスープは“呼び戻し”(前日のスープを少し残し新しい材料をつぎ足して安定したスープをつくること)でつくる豚頭だけのトンコツスープやね。いやぁ、コクがあってパンチがきいとる。このギトギトこってり具合がたまらんね」

森山「ここ2~3年、世の不景気とは関係なしにえらい伸びてきたんですよ。今、本厄に入ってるけど、ヤクがツキを呼んでくれたのかもしれんですね。いろんな出逢いが続いて、スゴイ楽しいです。県外のお客さんも多いんですよ」。

河原「この『魁獣みそ』ちゃあ、何ね?」

森山「これはですね、従業員のまかないでつくったおかずなんですけど、お客さんにビールのつまみを求められた時、ちょっと出してみたら喜んでもらって、それがきっかけで店に置くようになりました。おにぎりに付けて食べるとおいしいでしょう……」

  『魁獣みそ』は魁龍のオリジナル。もろみちりめん唐辛子に柚の風味が食欲をそそる。持ち帰りも用意されている。『魁龍』は開店当初、聞き慣れない店名を、よく「カイジュウ?」と間違われたので、字をもじって名付けた。

自信がついたら東京進出も

河原「森山クンは40歳やろ。ここを始めて9年目。店はもう増やさんとね?」

森山「自分の味を変えきらんのですよ。店を増やすと両方に気が回らんで、どっちかの味が落ちるんやないか、と思うんですね……。決して“守り”に入ってるわけやないけど、この味に惚れ込んどるから、この味を出し続けたい。ラーメンが大好きで自分にはラーメンしかないと思っとるし、ずっと大事にしていきたいんです。わざわざ遠くから、ここに食べに来てくださるお客さんに、いい加減なラーメンは出せんですもんね」

河原「頑張らやんたい。しかし、このラーメンなら東京に持って行っても絶対流行るっちゃけどなぁ・・・・」

森山「そうですか。自分に自信がついたら、東京にも出したいですね」

河原「今度、いっぺん僕たちの山王(福岡市)のテストキッチンにも遊びに来んね。何か一緒にやれるっちゃないかな」

森山「是非、若いモンも連れて行きます!」



魁龍
住所:福岡県北九州市小倉北区東篠崎2丁目1番6号
TEL:093-922-6666
営業時間:11:00~23:00 (日・祝21:00迄)
定休日:毎月第1火曜日

森山 日出一さん

森山 日出一さん

有限会社 魁龍本店
代表
森山 日出一さん

昭和34年8月9日、福岡県久留米市に生れる。 その後、父の転勤で北九州、天草と移り住む。 高校を卒業すると水商売に。20歳で『世良正則&ツイスト』の付き人として上京。しかし、食べて行けずに帰郷し再び水商売に戻る。スナックやショーパブなど15店舗を経営していたことも。人が好きで陽気な性格。ラーメン屋を始めたのは31歳から。「一生バカで居続けたい」と話す。