ラーメン職人の熱いストーリー ラーメン 東へ西へ

ラーメン東へ西へ No.17 らーめん むつみ屋

人口4500人の北海道月形町にできた1軒のラーメン屋が、開店からわずか3年半で「アレよ、あれヨ」という間に北海道と関東併せて25店舗(平成12年6月現在)に店を増やしている。

経営するのは竹麓輔さん。北海道月形工場でつくったスープ瞬間冷凍し、関東を含む全店へと配送することで北海道『むつみ屋』の味を全国に広めている。

メロンと炭坑の町、夕張に生まれ育った竹さんは、「いつまでもサラリーマンでいるのはイヤだ。30歳までには何かをやりたい」と考えていた。そして、子供の頃から好きだったラーメンが浮かび「じゃあ、ラーメン屋でも……」と気軽に店を始めた。

しかし、最初は自分がラーメンをつくるのではなく、人に店を任せ、そこそこの成功をおさめながら経営する形でサラリーマンと2足のわらじ生活が続いていた。

「10年近くたった頃でしょうか、勤め先にラーメン屋を経営していることがわかってクビになったんです。時期を同じくしていくつかのピンチが重なり人生最悪、どん底状態を経験しました」

と竹さん。仕事と家族を同時に失い、暗闇に迷い込んだような寂寞とした日々を過ごした。

ログハウスにこもってラーメン作りに没頭

そこに救いの手を差し伸べてくれた人がいた。月形にログハウスを持つ知人の勧めで、そのログハウスでの奮闘が始まった。

「挫折を経験し、落ち込んでいたんです。すべてを1からやり直そうと決意して、そのログハウスに住み込み、ラーメンのつくり方を勉強し直しました。夜中の3時には置き出して、何かに取り憑かれたようにラーメンに打ち込みました」

そして、平成8年12月24日、再起をかけたラーメン店『むつみ屋』がオープンした。

この店の『らーめん』は赤みそ、白みそ、醤油と多彩で、他にも『ハルユタカらーめん』(道産小麦粉スーパーハルユタカでつくった使用のらーめん)や牛乳入りの『カントリーらーめん』など、独自に開発されたらーめんがメニューに並んでいる。

ギョウジャニンニク』(別名:アイヌネギと呼ばれる身体にいいニンニク)を練り込んだ緑色の餃子やシャケごはんも人気メニューとなった。これらは、あのログハウス時代から、竹さんが1つ1つ工夫を凝らし生み出してきたメニューである。

日々店に立つラーメン職人と経営者、2つの側面を持つようになって、店には数々のドラマが生れた。京都からオートバイで旅してきた青年、東京の病院で看護婦をしていた女性、車の事故で困っているところに竹さんから手を貸してあげた男性、TV番組『愛の貧乏脱出大作戦』で修行に来たラーメン屋さんたち……。

「ようやく自分の味が見えてきた頃、全国から元気のいい人が集まってくるようになりました。彼らの夢を実現させてあげたいし、人生を預かっていると思えば間違ったことはできません。味に惚れてやって来るんだから、こっちだって本気で教えます」

北海道月形には、フロンティア・スピリットを抱き「自分もむつみ屋らーめんをやりたい」と集まってくる人が後を断たない。そのことと、後輩たちに「やってよかった」と言われる店づくりをしていきたいと燃える竹さん。そうやって、西へ南へのれん分けの店やフランチャイジーが増えていった。

会社を興して間もない頃、試行錯誤を重ねてらーめんづくりに精を出し、星の輝く北天を仰ぎながら、凍てつく屋根裏部屋で寝食を共にした仲間との思い出が今でも鮮明に残っている。

「あの仲間とあの経験があったから今があると思っています。一期一会を大切に、真面目なラーメンをつくり続けます」



らーめん むつみ屋
住所:北海道樺戸郡月形町1521-4
TEL:0126-53-2100
営業時間:夏季 10:00~21:30  冬季 11:30~22:00
定休日:不定休

竹 麓輔さん

有限会社むつみ屋
オーナー
竹 麓輔さん

昭和32年9月4日、北海道に生れる。サラリーマン生活の傍らラーメン店を経営していたが、平成8年の年末よりラーメンを本業とする。『むつみ屋』の名は、人々の仲むつまじい暮らしを願って付けられた名前。“北海道第2次開拓期”と銘打ち、自ら全国に新たな北海道ブームを仕掛けている。
※東京都東大和市
(042-590-0031)
神奈川県川崎市
(044-852-2325)
にも直営店がある。