ラーメン職人の熱いストーリー ラーメン 東へ西へ

ラーメン東へ西へ No.29 らーめん 山頭火

北海道・旭川を皮切りに14年で34店舗(平成14年5月現在)まで店を増やす『山頭火』。コンビニエンスストアには店名入りのカップ麺『しお』味と『しょうゆ』味が並んでいる。躍進を続ける『山頭火のおやじ』こと畠中仁会長に、昨年12月オープンした『山頭火キャナルシティ博多店(ラーメンスタジアム内)』で、いくつかの質問をしてみた。

――山頭火のラーメン、丼が小ぶりなのはどうしてですか? 食べるとけっこうボリュームがあるように感じるんですが……。

畠中-- 意外性があっていいでしょ? 小さく見えても量は平丼と同じくらいある。味も白濁スープは「くどそう」に見えて、あっさりしている。その落差が食べる人に小さな感激を与えていると思うんです。それに、チャーシューが小さくても大きく見えるでしょ(笑)。女性が大きな丼でガーッとラーメン食べる姿より、小さな丼で品よく食べる姿を見たかったし……。

――北海道では、あんなふうに梅干ラーメンに乗せる発想は通例ですか?

畠中-- いいえ、そんなことはありません。僕にとって、ラーメンは女の子のイメージ。竹久夢二の絵がモチーフだから小梅なんです。SSサイズの梅、店が増えるほど調達するのが大変ですね。でも、このサイズを探し続けます。

――あれだけ臭みのないサッパリ味にするためには、下処理にも相当な時間を要するでしょう?

畠中-- スープは香り(おいしさと旨味)は残すけど、臭み(獣臭)はいらない。そのため豚骨は低温で脱血し、丁寧に下処理していきます。それからボイルして急速冷凍し、48時間休ませます。

――豚骨下処理は各店でやっているのですか?

畠中-- ここでやってたら時間的にも間に合わないし、店内にニオイがこもってしまいます。ご覧の通りドライな厨房ですから、まず無理ですね。工場で一括生産しています。

――こちらのお店のように、床に水切りをしないスタイルは初めてなんですが……。

畠中-- お母さんの台所を想像してください。水を撒いてブラシをかけるようなことはしませんよね。台所で長靴も履かないでしょう。始まりが「子どものためにつくったラーメン」ですし、清潔で安心できる調理環境も味に繁栄されると思ったんです。麺あげで切った湯が飛散しないように気をつける。面倒なほうが緊張感があって意識も集中し、厨房も汚れませんよ。

カップ麺の売れ行きも好調

――話題は変わりますが最近、カップ麺の種類が増えましたね。コンビニで『しお』に加えて『しょうゆ』も見かけます。

畠中-- おかげさまで売行きがいいんですよ。いずれは『みそ』も出す予定です。

――カップ麺をつくる時は、お店のラーメンとの差別化をどのように考えておられますか?
畠中-- 「味は似てるけど、ちょっと違う」というのが私のイメージするところ。カップ麺で『山頭火』を初めて知った方が、店のラーメンを食べて「やっぱりお店のほうがおいしい」と思われるか、お店の味に慣れている方が「カップ麺もがんばってるじゃん」と思ってくださるか、そっくり同じより、何か発見があったほうが面白いですよね。結局、日清さんには10回以上、味の調整をお願いしました。レトルト臭、インスタント臭がするようではダメ。ラーメンのニオイは丼から20cm離れたあたりで香るくらいがちょうどいい。クセの無い味ほど、再現するのにつくりにくいものなんですよ。

――ありがとうございます。次の展開も期待しています。



らーめん山頭火
住所:北海道旭川市3条8丁目 緑橋ビル
TEL:0166-25-3401
営業時間:11:00~20:45(20:45 ラストオーダー)
定休日:なし

畠中 仁さん

らーめん山頭火
畠中 仁さん

昭和26年4月10日、北海道歌登にクリーニング店の二男として生れる。中学では生徒会長を務めたものの、夏休みを過ぎても帰らない放浪癖が原因で解任された経験を持つ。高校は卒業しないままに様々な人生勉強を積み重ねながら全国流浪の旅を続け、38歳でラーメン店を創業し今日に至る。株式会社アブ・アウト取締役会長。