ラーメン職人の熱いストーリー ラーメン 東へ西へ

ラーメン東へ西へ No.46 琉球新麺 通堂

2001年3月、新横浜ラーメン博物館「新ご当地ラーメン創生計画」で『琉球新麺 通堂』がオープンした。厳正なる審査をパスしたのは金城良次さん率いる『りょう次ファミリー』の面々である。そのプロデュースを務めたのが河原成美であり、金城氏等がラーメン修業したのは『博多 一風堂』の山王テストキッチンだった。あれから4年。今や沖縄に3軒の『通堂』がオープンし、この春キャナルシティ博多のラーメンスタジアムにも出店を果たした。


金城さんは18歳で飲食の仕事に就いた。神戸の居酒屋修業をスタートし、以降20年以上、居酒屋を中心に飲食店を経営するなど、40になるまでラーメン業界とは無縁だった。それが何故、ラーメン屋を志すことになったのか?

それは、たまたま目にした新聞広告のコピー、「求む!沖縄ラーメンの元祖になる人」に導かれてのこと。鰹節のきいたコーレグスが合う、ふるさと沖縄の香りいっぱいのラーメンが、脳裏にふつふつと浮かび「沖縄にそんな店があったらすごい」と思った。

公募をかけたのは『新横浜ラーメン博物館』とプロデュースを担当する一風堂河原だった。ラーメンをつくった経験もない自分が、審査に受かる自信はない。しかし、

「応募することさえしなければ、後々きっと後悔する。応募して落ちたのなら、受かった沖縄ラーメンを気持ちよく応援できるだろう」

と思った。そして、スタッフには内緒で応募した。

書類審査、調理の技術審査、一般常識試験、面接と進むうち緊張はピークに。一風堂の山王テストキッチンには、テレビ局まで取材に来ているではないか。苦手な面接は、ますますあがって満足のいくものではなかった。

「落ちて当然」と思ったから帰り際そこに居合わせた関係者にひとり残らず握手を求め、併設する一風堂の店舗で豚骨ラーメンを食した。初めて口にする豚骨ラーメンは、未知なる味に感じた。

「これがTVチャンピオンの創り出したラーメンなんだな」
と噛み締め、

「今回はダメでも、いつかきっと河原さんと一緒に仕事がしたい」

と強く思った。

キャナル店では博多バージョンの味を

後日、その河原本人から直接電話が入る。ラー博(新横浜ラーメン博物館)行き切符を手にしたのである。「まさか自分が?」と信じられなかった。それが、ラーメン業界へ足を踏み入れた第1歩だった。一風堂でのラーメン修業の後、新横浜へ乗り込んだ。

出店期間は1年。ラーメンのみならず、人々との出会いふれ合いの中から様々なことを学んだ。ラー博での経験は、何物にも換えがたい貴重な人生の1ページとなった。

「博物館を去る日に大勢のラーメン仲間が駆け付けてくれたことは、一生忘れない」

と金城さんは言う。沖縄に初めての出店、2軒目、3軒目と増えるたびに、皆さんから届く応援に「ありがとう」の想いでいっぱいになる。

そして、ラーメン店主やそのスタッフと出会えたこと、ラーメンのつくり方を教え励ましてくれること、それぞれの職人が醸し出す熱いエネルギーに触れられることなど、感謝の気持ちは尽きることがない。きっかけをつくってくれたラーメンに、とことん本気で取り組んでいこうと何度も自分に言い聞かせている。

今回の博多出店は、出店続きで1度は辞退したが、恩師である河原に「今出店することもチャンスだよ。声がかかることをチャンスだと思わなければ」と促され、意を決した。

豚骨ラーメンが幅をきかせる博多で、自分たちのラーメンがどれだけ受け入れられるか、不安もあった。ゆえにラーメンを博多バージョンの味に整えた。

「博多できれいすぎる味は通用しない。丁寧な仕事と錯覚して、旨味成分まで洗い流しているんじゃないか?」

という先輩のアドバイスに気付きを得た。コクを出すために豚のゲン骨を増やし、割った骨から出るの旨味を存分に寸胴に行き渡らせる。

「ラーメンづくりはまだまだ子ども。本当の仕事はこれからだ」

と金城さん。沖縄の材料と沖縄人の魂がいっぱい入った『琉球新麺 通堂』のラーメン。どれくらいおいしいか、それは沖縄の店か、博多のラーメンスタジアムで確かめてほしい。



琉球新麺 通堂
住所:沖縄県那覇市金城5-4-6
TEL:098-857-5577
定休日:なし
営業時間:11:00~25:00
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金城 良次さん

オフィスりょう次
社長
金城 良次さん
RYOUJI KINJYO

1960年ゴザ市(現・沖縄市)に生まれる。5人兄妹の3番目、テーラー業を営んでいた父が10歳で他界。高校時代は勤労学生で、居酒屋のアルバイトにの めり込み留年。結局、中退して18歳から神戸で居酒屋修業。帰郷後、27歳で独立。2001年、新横浜ラーメン博物館に「琉球新麺 通堂」をオープン。2002年8月、沖縄出店。本年3月、福岡出店。