ラーメン職人の熱いストーリー ラーメン 東へ西へ

ラーメン東へ西へ No.6 六角家 神藤 隆さん

の硬さの好みを聞かれる店はあっても、六角家のように「スープに浮かぶの量は、多め、普通、少なめ、どれがいいですか?」とまで聞く店は少ない。ガラ(とんこつ)をたっぷり使い、関東風にアレンジしたとんこつしょうゆラーメンは、力強い味で若者に人気がある。

「父親がトラックの運転手で、帰る時間がまちまちだったから、自分はサラリーマンになろうと思っていたんです」

と、神藤社長。学校を出て本当に5年間はサラリーマンとして勤めたのだそう。だが、求める世界は別にあると感じ、23歳から10年近く洋食店で働いた。

六角橋商店街1号店

そして、どうせ自分の店を持つなら、昔から好きだったラーメン屋にしようと考え、横浜・新杉田で評判の『吉村家』に弟子入りし、腕を磨いた。その後、横浜でいちばん賑やか六角橋商店街に初めて店を構えたのは、昭和57年、神藤社長33歳の時だった。

「うちは、ハードだからね。なかなか人が続かないんだ」

と社長自ら口にする通り、この店ではつくることに徹している。

そして、の固さやあぶらの濃さなど、お客様の好みの味を大切にする。

スープをつくりおきするなんて、もってのほか。冷ますとガラからでる甘味は消えてしまうんです。化学調味料を使えば、温め直しても同じ味がするのでしょうが、それだと口に残ってしまい、”本物の味“とは言えない」

と、つくりたてにこだわる。とんこつの旨みを損なわないよう、ガラは味が出なくなると出して、また新しいガラと入れ替える。その繰り返しで、例えば本店ではスープに1日200キロからのガラを使う。加える鶏ガラも40~50キロになる。

スープをつくる、を上げる、見ていれば何となく簡単にやれると誤解するが、内容が伴わない人がつくると、すぐ味に出てしまう」

と言う。だから、厨房にアルバイトは1人もいない。

ラーメンを軽く考えるなかれ。一人前になるには、時間がかかる。任せられる人が育ったら、また店を出したいとは思っているそうだが、何しろ20~30人採用して、1年もすると1割しか残らないようなハードな職場だ。

現在、横浜を中心に羽田、北海道と合わせて6店舗。ラーメンに惚れ込んだ男たちが、黙々とつくる六角家ラーメンのれんをくぐれば、「いらっしゃい」と野太い声で迎えてくれる。



六角家
住所:横浜市神奈川区西神奈川3-1-5
TEL:045-413-0356
営業時間:11:00~21:00、11:00~23:00
定休日:無休(年末年始を除く)

神藤 隆さん

有限会社 六角家
代表取締役
神藤 隆さん

昭和24年元旦、横浜生まれ横浜育ち。サラリーマン生活を経て、コックとして腕を磨き、その後ラーメン店を開業。現在は6店舗を経営する。『六角家』は将来、名前だけでどこのラーメンかわかるように、横浜で有名な六角橋商店街からとった。